「3か月先の為替レート」と聞くと、3か月後に市場がどこまで動くと予想しているのか、と思いたくなります。けれど、為替予約に使われるフォワード・レートは、将来の相場を当てるための数字とは役割が違います。
将来の受け渡しに使う交換条件を、いま決める。その条件には、2つの通貨の金利と受け渡しまでの期間が関わります。今回は、架空の計算例を使って、この違いをゆっくりほどいてみましょう。
「先のレート」には、違う意味がある
為替予約は、交換する条件を先に決める契約
BISの用語解説では、アウトライト・フォワードは、将来の通貨交換に使うレートを契約時点で合意する取引として説明されています。ポイントは、交換する日と、条件を決める日が別にあることです。BISの定義を読むと、予想値よりも「合意した条件」として捉えやすくなります。
予想は、まだ決まっていない相場についての見方
一方、3か月後のスポット相場の予想は、そのとき市場でどの価格が付いているかについての見通しです。契約の交換条件が決まっても、将来の市場価格がその水準に固定されるわけではありません。「将来使う価格」と「将来付くと思う価格」を分けると、話がすっきりします。
三菱UFJ銀行の外貨預金ヘルプも、為替予約レートを将来相場の予測で決めるのではなく、締結時の相場や期間、通貨間の金利差などから算出すると説明しています。

金利の違いが、交換条件に入ってくる
同じ期間でも、通貨ごとに利息が違う
日銀の「外国為替市況」の解説は、フォワード相場とスポット相場の差を、それぞれの通貨の金利との関係で説明しています。ドル金利が円金利を上回る場合に、フォワードがスポットよりドル安・円高側となる基本的な関係も示しています。これは同解説の参考欄「3ヶ月フォワード・スプレッド」にある仕組みの説明で、現在の相場予測ではありません。
架空の数字で、2つの経路を比べてみる
ここからは説明用の仮定です。スポットを1ドル=150円、1年間の円金利を1%、ドル金利を4%とします。手数料や売買価格の差がなく、同じ金利で借り入れと運用ができる単純なモデルを考えます。現在の実勢値ではありません。
150円を円のまま1年間運用すると151.5円。150円を1ドルに換えて同期間運用すると1.04ドルです。この1.04ドルの円への交換条件をあらかじめ決め、両経路の受取額がそろうとすれば、1年先のレートは151.5÷1.04=約145.67円になります。
150円より低い数字になりましたが、計算に「1年後は円高になる」という予想は入れていません。2つの通貨の利息をそろえて考えただけです。この例は取引の提案ではなく、価格の違いが生まれる理由を見るためのものです。
実際の提示レートには、ほかの条件もある
金利差の計算だけで、すべては決まらない
先ほどの例は、為替リスクを予約で覆った2つの経路の収益がそろう「カバー付き金利平価」の考え方を単純化しています。ただし、現実の市場では、通貨を調達する需要や金融機関の取引余力などによって、この関係からずれが生じることがあります。BISはこれをクロスカレンシー・ベーシスの解説で取り上げています。
実務上は、期間に対応した金利、受渡日、日数の数え方、売り値と買い値、手数料なども確認が必要です。政策金利を2つ拾って引き算すれば、銀行から提示される予約レートをそのまま再現できる、というものではありません。
「差額」の表示と、交換レートそのものを区別する
資料によっては、フォワード・レートそのものではなく、スポットとの差を表示します。単位や符号を読み落とすと、差額を交換レートだと思ってしまいます。先ほどの例なら約145.67円が交換レートで、150円との差は約マイナス4.33円。どちらの数字を見ているのか、欄の説明を添えて読みたいところです。

ニュースで見かけたら、まず言葉を確かめよう
期間・表示・目的を一緒に読む
「先物」「先渡し」「フォワード」といった言葉が出てきたら、どの商品・統計を指すのかを確かめてみてください。為替予約と取引所の通貨先物、個人向けFX口座のスワップポイントは、同じ欄の同じ数字ではありません。
何か月先の受け渡しなのか。1ドルを何円で示しているのか。表示は交換レートか、スポットとの差か。そして契約条件の説明なのか、調査や担当者による予想なのか。この順に読むだけでも、受け取り方が変わります。
決めた条件と、これからの値動きを分けておく
予約レートが円高側にあることだけを根拠に、将来の円高を決めつけることはできません。予約によって交換条件を固定できることと、その条件が後日の市場価格より有利になることも別の話です。
「先の数字だから予想だ」と結び付ける前に、その数字は何のために作られているのかを一度確かめる。少し地味ですが、相場の資料を読むときに役立つ習慣になりそうです。


コメント