日銀のETF売却について、「年間8,600億円」と「時価で2兆4,600億円程度」という数字が並んでいます。桁が違うと、別々の売却計画があるようにも見えますよね。まず確かめたいのは、同じ保有資産をどの物差しで数えた数字なのか、という点です。
2026年10月30日の決定をもとに、簿価と時価、実施時期、売却完了までの参考年数を整理してみましょう。円相場の方向を決めつける前に、ニュースの数字を読むための話です。情報は11月3日午前の確認時点に基づきます。
8,600億円と2兆4,600億円を足さない
簿価は帳簿上の金額、時価は価格を反映した金額
日銀は、保有ETFの年間売却ペースを簿価ベースで3,300億円程度から8,600億円程度へ見直すと決めました。一方、決定文の注記には、時価換算で年間2兆4,600億円程度とあります。同じ計画について、評価の基準を変えた数字が示されているわけです。
時価換算には過去の売却実績の比率を使う
この換算は、2026年1〜9月に日銀が売却したETFの時価と簿価の比率を使ったものです。今後も必ず同じ金額で売れると約束した数字ではありません。8,600億円に2兆4,600億円を加えると、同じ計画を二重に数えてしまいます。
たとえば、ある品物の仕入れ時の帳簿と、現在の値札を並べる場面を想像すると、二つの物差しの違いがつかみやすいかもしれません。値札が変わっても、品物が二つに増えるわけではないですよね。

発表は10月、見直したペースは来年1月から
決めた日と実施する日を分ける
見直しの実施は2027年1月からです。10月30日に発表されたからといって、その日から新しい年間ペースに切り替わったとは読めません。また、年間の目安を12で割った額が、毎月必ず売られるという説明でもありません。
一時的な調整や停止の余地もある
参考資料は、市場などの状況に応じて、年間ペースの範囲内で売却額を一時的に調整したり停止したりできるとしています。予定額だけを見るより、こうした運用条件も一緒に押さえるほうが、固定された売り注文のように受け取る誤解を避けられそうです。
「約43年」は売却完了日の約束ではない
残高を年間額で割った参考計算
日銀の参考図では、見直し後の売却完了までの年数が約43年とされています。注記によると、2026年9月末の保有ETF残高を簿価で捉え、年間の簿価売却額で割った計算です。将来の変更も含めて確定した工程表とは区別しておきたいところです。
割り算の上下で評価基準をそろえる
ここで簿価の残高を時価換算の年間額で割ると、資料とは違う計算になってしまいます。残高と年間売却額の単位がどちらも「円」でも、評価基準まで同じとは限りません。数字を比べるときは、金額の横にある小さな注記も頼りになります。

FXでは政策金利の判断も別に確認しよう
ETF売却と短期金利はそれぞれの決定を読む
同じ10月30日の決定文で、日銀は無担保コール翌日物を1.25%程度で推移するよう促す方針を示しました。この金融市場調節方針は賛成8・反対1、ETF売却ペースの見直しは全員一致です。資産処分の変更を、そのまま政策金利の引き上げと読み替えないことが大切です。
円の方向へつなぐ前に、数字の意味を確かめる
ETF売却の数字だけから円高・円安の結論を出すのは難しそうです。為替を考えるときには、短期金利の方針、今後の経済・物価判断、海外側の材料も確認する必要があります。今回の資料から確かめられるのは、売却の評価基準と時期、運用条件。相場の答えまで一枚の資料に背負わせず、まずここを整理しておきましょう。
出典:日本銀行の「当面の金融政策運営について」(2026年10月30日)、同日のETF売却ペース見直しの参考資料。同じ決定の本文と参考図を照合しています。


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