「今月の物価上昇は速くなった。でも、前年比の伸びは小さくなった」。米国の物価ニュースを読んで、どちらを見ればよいのか迷うことがあります。今回の米コアCPIは、まさにその組み合わせでした。数字が食い違っているのではなく、比べている期間が違います。
9月11日に公表された2026年8月分を、月次と前年比に分けて眺めてみましょう。以下は9月12日時点の公開資料に基づく整理です。
コアは月次で加速、前年比では鈍化
同じ系列を横に並べる
米労働統計局(BLS)によると、食品・エネルギーを除くコアCPIの前月比は、7月の0.2%上昇から8月は0.3%上昇へ。一方、前年比は2.5%から2.4%へ縮小しました。前月比は季節調整済み、前年比は季節調整前の数字です。
| 系列と比較期間 | 7月 | 8月 |
|---|---|---|
| コア・前月比(季節調整済み) | 0.2% | 0.3% |
| コア・前年比(季節調整前) | 2.5% | 2.4% |
| 総合・前月比(季節調整済み) | 0.1% | 0.4% |
| 総合・前年比(季節調整前) | 3.4% | 3.4% |
総合の前年比まで下がったわけではない
食品とエネルギーも含む総合の前年比は3.4%で変わっていません。「米CPIが鈍化」とだけ書くと、この違いが抜けてしまいます。どの系列の、どの比較期間の話なのか。見出しにその二つを補うだけでも読みやすくなります。数値の出典はBLSの8月CPI公表資料です。

前年比は、毎月動く12か月の窓
比較相手も一緒に入れ替わる
前月比は直前の月との比較、前年比は前年の同じ月との比較です。7月の前年比から8月の前年比へ進むと、今年側だけでなく、比較相手も前年7月から前年8月へ移ります。直近の上昇が少し強まっても、12か月で見た伸びが小さくなることはあります。
たとえば、同じ条件で測った架空の指数が前年7月100、前年8月101、今年7月103、今年8月103.4だったとします。今年の指数は7月から8月へ上昇していますが、前年比は7月の3%から8月の約2.38%へ下がります。これは仕組みを説明する例で、実際のCPIの値ではありません。
月次の数字を足すだけでは再現できない
実際の公表値では、前月比と前年比で季節調整の扱いも異なります。さらに変化率には丸めがあります。表に載った前月比を12個足せば前年比とぴったり一致する、と考えないほうが自然です。短期の勢いを読む欄と、1年間の変化を読む欄として、それぞれを使ってみましょう。
総合とコアの間にも、確認したい中身がある
今回はガソリンが総合を押し上げた
BLSは、8月のガソリン価格が前月比3.9%上昇し、総合CPIの月次上昇の3分の1超を占めたと説明しています。エネルギー全体は2.1%上昇でした。総合の0.4%という数字には、こうした内訳があります。
コアにも生活に身近な価格が含まれる
食品とエネルギーを外しても、物価の動きがなくなるわけではありません。住居の指数は前月比0.3%上昇しています。総合とコアのどちらか一方を「本当の物価」と決めるより、含まれる項目を確かめると、ニュースの説明がぐっと具体的になります。

来週の会合と、今回の統計を分けて考える
会合の日程は分かっても、決定はこれから
FRBの公式日程では、次のFOMCは米国時間9月15〜16日で、経済見通しの公表を伴う会合です。9月12日時点では、まだその決定は出ていません。今回のCPIを読んだことと、政策金利の結論が分かったことは別です。
ドル円へつなげる前に、読み取れた範囲を残す
今回確認できたのは、コアの月次上昇が強まり、前年比の伸びは小さくなったこと、そして総合ではガソリンの寄与が大きかったことです。これだけでドル円の次の方向まで決めることはできません。
ニュースをメモするなら、「コア・前月比」「コア・前年比」「総合を動かした項目」を別々の行にしてみると整理しやすいと思います。強いか弱いかを急いで一言にせず、何が変わったのかを持って会合の説明を読む。今回は、そのひと手間が役に立ちそうです。


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