相場の現在地

AIの広がりは金需要をどこまで押し上げる? 部品の数と使用量を分けて読む

AI向けの半導体やデータセンターが増えると聞くと、「そこで使われる金も、どんどん増えるのかな」と気になりますよね。金は装飾品や投資のためだけでなく、電子部品にも使われています。

ただ、製品の数と金の使用量は、同じ割合で増えるとは限りません。世界黄金協会(WGC)が9月24日に公開した解説と、2026年4〜6月期の統計を手がかりに、部品の数、1個あたりの使用量、需要全体の三つをつないで考えてみましょう。

電子部品の中で、金はどんな役割を持つ?

光るためより、つながりを保つため

WGCの解説では、金の電気を通しやすい性質や、腐食・酸化への強さが電子用途で評価されてきたと説明しています。細い配線や薄い被膜にできることも、部品の中で使われる理由の一つです。見た目の華やかさとは、少し違う働きですね。

性能を保ちながら、どこまで減らせるか

高価な素材を使うメーカーには、必要な性能を保ちつつ使用量を抑えたい事情もあります。一方、WGCは、高性能の機器や安全性が重視される用途では、信頼性を確保するために金が引き続き必要になるとみています。「高いから全部置き換える」とも、「大切だからいくらでも使う」とも言い切れないところです。WGCの9月24日解説で、こうした用途と省資源化の関係を確認できます。

部品が増える力と、1個あたりの金を減らす力

数が増えても、掛け算のもう一方が変わる

同じ種類の部品だけを考えるなら、使う金の総量は「部品の数×1個あたりの金使用量」と整理できます。これは見方をつかむための単純化で、実際のAI需要を推計するモデルではありません。

たとえば、100個の部品にそれぞれ1単位の金を使えば、合計は100単位です。部品が120個になっても、1個あたりが0.8単位になれば合計は96単位。数は20%増えたのに、金の量は4%減ります。説明用の架空例ですが、製品数の伸びをそのまま金需要の伸びに置き換えにくい理由が見えてきます。

架空例で100個に1単位ずつ使う場合と120個に0.8単位ずつ使う場合を比較した図
同じ種類の部品を仮定した説明用の架空例です。実測値や将来の需要予測ではありません。

現実には、製品の組み合わせも変わる

もちろん、実際の電子市場にはさまざまな部品があります。金を多く使う用途と少なく使う用途の割合が変われば、総量も変わります。台数のニュースだけでなく、どの用途が広がっているのかも確かめたいですね。

WGCの9月解説では、2025年の技術用途の金需要は約323トンで、前年からほぼ変わらなかったとしています。AI向け需要の広がりと、節金や小型化による使用量の抑制が並ぶ、というのが同協会の整理です。この年次の数字を、2026年のAI向け需要そのものと読み替えないようにしましょう。

4〜6月期は、電子分野と全体で伸びが違った

電子用途68.3トンは、AIだけの数字ではない

7月30日に公表されたWGCの2026年4〜6月期報告では、技術用途全体は80.4トン、前年同期比2%増でした。その内数である電子分野は68.3トン、4%増です。電子分野にはAI以外の用途も含まれるため、68.3トンを「AIが使った金」とすることはできません。WGCの技術用途統計(基礎データ:Metals Focus)に基づく数字です。

2026年4〜6月期の技術用途全体80.4トンと、その内数である電子分野68.3トンを比較した図
出典:WGC、Gold Demand Trends Q2 2026(基礎データ:Metals Focus)。電子分野は全体の内数で、AI専用の集計ではありません。

電子分野の伸びを、技術用途全体へそのまま広げない

電子分野は技術用途全体に含まれます。二つを足すことはしません。また、ほかの用途も含めた全体の伸びは2%で、電子分野の4%とは異なります。目立つ分野の勢いと、まとまった需要の伸びを別々に読むことが大切です。

この報告の対象は4〜6月です。9月24日の解説が新しくても、四半期の数字まで9月の需要に更新されたわけではありません。公表日と対象期間をそろえて確認すると、ニュース同士をつなぐときの行き違いを減らせます。

ゴールドの材料として、何を確かめていく?

需要の量と、価格の反応を一段ずつつなぐ

AI投資の話を読んだら、まず部品や設備のどの用途に関わるのか、次に金の使用量がどう変わるのか、と一段ずつ考えてみましょう。用途によって金の役割が違うので、設備投資の金額から金のトン数へ直接飛ぶことはできません。

さらに、技術用途は金需要全体の一部です。WGCの四半期報告全体では、宝飾品、投資、中央銀行なども分けて扱われています。一分野の増加が、そのまま金価格の上昇を約束するものではありません。供給やほかの需要、為替・金利の材料がどう重なるかも残ります。

次の数字では、用途と使用量の変化に注目

今後の報告で電子分野の需要が伸びた場合も、AI向け用途の広がり、省資源化、ほかの電子用途の動きを分けて確かめたいところです。伸びが鈍った場合にも、AI投資そのものが止まったと即断する必要はありません。

AIという大きな言葉の先に、部品の数と小さな金の使用量があります。その両方を眺めると、ゴールドのニュースを受け取るときの問いが少し具体的になりますね。

数値・資料の確認日:2026年9月29日(日本時間)。年次統計は2025年、四半期統計は2026年4〜6月期が対象です。

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