相場の現在地

MACDの「プラスの棒」、何と何の差? MT5と差分ヒストグラムを読み分けよう

MACDの棒がゼロより上に出ている。「短期の移動平均が長期の移動平均を上回ったのかな」と思ったら、別の画面では違う見え方をしている。そんなときは、まず棒の計算対象を確かめてみましょう。

実は、MACD本体を棒で描く表示と、MACDとシグナルの差を棒で描く表示があります。この記事では、MT5標準のMACDと、StockChartsが説明する差分ヒストグラムを読み分けます。現在の相場や売買のタイミングを扱う記事ではありません。

棒の形が似ていても、計算している差は違う

まずMACD本体の意味から

基本となるMACDは、短い期間の指数平滑移動平均(EMA)から、長い期間のEMAを引いた値です。標準的な12・26期間なら「12期間EMA−26期間EMA」。プラスなら短期EMAのほうが高く、マイナスなら短期EMAのほうが低い、という関係を表します。ここでいう上下は、二つの平均値の位置関係です。

MT5標準では、このMACD本体が棒になる

MetaTrader 5の公式ヘルプにある標準MACDの図は、本体を棒で、シグナルを点線で示しています。計算欄には、MACD本体が12期間EMAと26期間EMAの差、シグナルがMACDの9期間単純移動平均(SMA)と記載されています。

この標準表示の棒がプラスなら、短期EMAが長期EMAを上回っています。ただし、それだけで次の足が上がると決まるわけではありません。

高さの違う定規と木のブロック、虫眼鏡を並べたイラスト
比較する対象の違いを表す概念イラストです。指標値や市場データは示していません。

差分ヒストグラムのプラスは、別の位置関係

こちらはMACDからシグナルを引く

StockChartsのMACD-Histogram解説では、棒は「MACD−シグナル」です。この説明でのシグナルはMACDの9日EMA。棒がプラスなのは、MACDがシグナルより上にあるためです。MACD本体がゼロより上にあることまでは意味しません。

マイナス同士の引き算でも、差はプラスになる

計算の関係だけを見る架空の例を置いてみます。MACDを−0.20、シグナルを−0.30と仮定すると、差分は「−0.20−(−0.30)=+0.10」です。二つともマイナスですが、MACDのほうが高いので差はプラスになります。

この例では、MACD本体は負なので短期EMAは長期EMAより低いまま。それでも、差分ヒストグラムは正になります。これは実際の価格履歴から算出した値ではなく、引き算を確認するための仮定値です。将来の上昇を示す例でもありません。

「12・26・9が同じ」でも、計算方法まで同じとは限らない

シグナルにはSMAとEMAの違いがある

今回確認した公式説明では、MT5標準のシグナルは9期間SMA、StockChartsの説明は9日EMAです。日足で期間をそろえたとしても、平均の取り方が違います。同じ「9」という数字だけを見て、同じシグナルだとは決められません。

FidelityのMACD解説もシグナルを9期間EMAと説明しています。MACDという名前だけで、どのツールにも同じ描き方や平均方法が当てはまると思わないほうが、画面の違いを整理しやすくなります。

色や棒の長さより、系列名と式を先に見る

画面を比べるなら、まず「棒はMACD本体か、MACDとシグナルの差か」を確認し、続いてシグナルの平均方法と期間を確かめてみてください。さらに対象銘柄、時間足、適用価格が違えば、同じ数値を比較していることにもなりません。

色の印象だけでは引き算の中身は分かりません。棒にも名札を付けてから読む、くらいの気持ちがちょうどよさそうです。

二冊の説明書と虫眼鏡、色付きタイルを並べたイラスト
ツールの説明を確かめるための概念イラストです。売買を示すものではありません。

ゼロを見るときは「何と何が等しいか」を考える

二つのゼロは、同じ出来事ではない

MACD本体がゼロなら、短期EMAと長期EMAが等しい状態です。一方、差分ヒストグラムがゼロなら、MACDとその表示で使うシグナルが等しい状態です。どちらもゼロですが、比べている相手が違います。

表示を理解することと、収益を検証することを分ける

棒の定義が分かると、何が変わったかを具体的な言葉で記録しやすくなります。ただ、その読み取りだけで手法の成績までは分かりません。Fidelityも、横ばいの相場ではMACDとシグナルの交差が繰り返される点を説明しています。

「プラスの棒だから」と先へ急ぐ前に、何を引いたプラスなのかを一度確認する。二つの表示を見比べるときには、その小さな確認が役に立ちそうです。

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