「米国の赤字が広がった」と聞くと、ドル円もすぐ同じ方向へ動きそうに感じるかもしれません。ただ、どの赤字を、いつの数字として見ているかで話は変わります。
米商務省の経済分析局(BEA)が9月24日に公表した資料には、2026年4〜6月期の経常収支の赤字2,460億ドルと、6月末時点の対外純投資ポジション、マイナス22.42兆ドルが並びます。桁も大きく違いますが、まずは「一定期間の動き」と「一時点の残高」を分けてみましょう。
2,460億ドルは、4〜6月の取引を集めた数字
前期から334億ドル拡大した経常赤字
BEAの9月24日の発表によると、米国の4〜6月期の経常収支は2,460億ドルの赤字でした。改定後の1〜3月期の赤字2,126億ドルより334億ドル大きくなっています。これは四半期中に生じた取引の差額で、6月末に抱えている対外債務の総額ではありません。
「輸入が増えた」だけで片づけない
BEAは赤字拡大について、財の赤字が広がった一方、第一次所得と第二次所得の赤字縮小が一部を相殺したと説明しています。経常収支には財やサービスの取引だけでなく、海外との所得の受け払いなども入ります。数字を見たら、どの項目が動いたのかを一段だけ確認したいところです。IMFの2026年の政策文書も、経常収支の背景を国内の貯蓄と投資、政策などの関係から捉えています。

マイナス22.42兆ドルは、6月末に残った差額
海外に持つ資産と、海外から持たれる負債
BEAの対外投資ポジションの説明では、米国居住者が海外に持つ金融資産と、海外居住者が米国に持つ資産に対応する米国の負債、その差を期末時点で示します。2026年6月末は資産46.97兆ドル、負債69.39兆ドルで、差額の対外純投資ポジションはマイナス22.42兆ドルでした。こちらは6月末の残高です。
前期末との差も、経常赤字とは同じ額にならない
3月末のマイナス21.27兆ドルから、純額はさらにマイナス方向へ動きました。しかし、4〜6月の経常赤字2,460億ドルを、そのまま期末残高の変化として足すことはできません。保有する資産や負債の市場価格が変わると、取引をしなくても残高の評価額は動きます。BEAは今回、米国の対外資産の増加に3.03兆ドル、対外負債の増加に3.95兆ドルの価格変動が寄与したと記しています。残高の変化を読むには、取引と評価額の変化を分ける必要があります。

ドル円とつなげるときは、もう一呼吸
赤字の拡大だけで、値動きの向きは決められない
経常赤字は大切な手がかりですが、今回の数字は4〜6月の取引を9月にまとめて公表したものです。発表直後のドル円の方向を、この一つの数値だけから決めることはできません。米連邦準備制度理事会(FRB)のドルの為替価値についての説明も、ドルの価値は為替市場で決まり、特定の水準を政策目標にしていないとしています。
見る順番をそろえる
まず「いつの取引か」。次に「四半期の差額か、期末の残高か」。そして残高なら「取引と価格変動のどちらが寄与したか」。この順番で確認すると、大きな数字に引っ張られずに済みます。ドル円を見るときも、この統計を背景の一つとして置き、同じ時点の金利や政策、ほかの材料と分けて考えるのが自然です。
数字を一行で受け取る前に
今回の二つの数字は、役割が違う
2,460億ドルは2026年4〜6月の経常赤字、マイナス22.42兆ドルは6月末の対外純投資ポジションです。前者は期間、後者は時点を示します。同じ「米国の対外」という見出しに並んでいても、単位と時点をそろえずに比べないようにしたいですね。
次に確かめるのは、内訳と改定
BEAの今回の発表では、1〜3月期の経常赤字も改定されています。次の公表で数字や説明が変わる可能性もあります。ニュースの一行を見たら、元の公表日、対象期間、内訳、改定の有無を確認する。それだけでも、為替の材料を少し落ち着いて読めます。


コメント