日銀の国債買入れについて「月2.3兆円」という数字を見ると、保有する国債がその分だけ増えるように感じるかもしれません。でも、新しく買う量と、手元に残る量は別のものです。満期を迎える国債もあるので、買入れを続けながら残高が減ることもあります。
9月30日に公表された10〜12月の買入れ予定を手がかりに、予定額の内訳、保有残高、取引しやすさを順に見てみましょう。ドル円の方向を決める材料にする前に、数字が何を表しているかをそろえておきたいところです。
月2.3兆円は、これから買う量の目安
表の合計には物価連動債も入っている
日銀が2026年9月30日に公表した四半期予定では、月間オファー金額の合計が23,000億円、つまり2.3兆円となっています。利付国債の各年限を足すと22,700億円で、ここに物価連動債300億円を加えた合計です。「利付国債だけで2.3兆円」と読むと範囲がずれてしまいます。
また、これは日銀がすでに保有している国債の残高でも、10〜12月の3か月分を足した数字でもありません。表の列は「月間」の予定額です。日銀の四半期予定で単位と集計範囲を確認できます。
1回の金額と、月の金額を分ける
たとえば残存期間が1年超3年以下の利付国債は、1回当たり3,300億円、月間6,600億円が目安です。10月分のオファー日は7日と21日。1回分だけを月の合計と比べないようにしたいですね。
資料名は10〜12月の四半期予定ですが、今回載っている日程は10月分です。11月の日程は10月30日17時(日本時間)に公表予定。金額は目安で、市場の状況に応じて回数などが変わる場合もあるため、予定表を実績として扱わず、実際のオファー通知を読み直す必要があります。
買入れの減額と、保有国債の売却は別の動き
満期で戻る分も、残高を変える
日銀の2026年6月の買入れ計画では、月間の買入れ予定額と、保有国債残高の推移が別々に示されています。買入れ計画の説明も、買う量と保有する量を分けて読む手がかりになります。
満期になれば国債は償還されます。その分が新たな買入れを上回れば、売却をしなくても残高は減り得ます。日銀の2024年9月の田村審議委員の説明でも、この関係が整理されています。こちらは仕組みの参考であり、現在の保有額や今後の政策を示す資料として使っているわけではありません。
100に2を足しても、3が戻れば99になる
説明用に、月初の保有残高を100、月中の買入れを2、償還を3としましょう。売却がゼロでも、月末は100+2−3=99です。買入れがプラスであることと、残高の増減がプラスであることは一致しません。
これは単位を任意とした架空例です。評価基準を同じにし、売却、取得価格と額面の差に伴う調整など、買入れと償還以外の要因は省いています。実際の残高を計算した数字ではありません。「買入れ減額」という言葉だけから、同じ額の国債を売っていると受け取らないための例です。

国債の取引しやすさは、別の資料で見る
出来高が多ければ、それだけで安心できる?
9月30日には、日銀の国債市場の流動性指標も公表されました。先物市場の図では、出来高に加えて、売りと買いの提示価格の間隔であるビッド・アスク・スプレッド、最良売り価格の注文枚数、取引が価格に与える影響などを並べています。
たくさん取引されていても、価格の間隔が広かったり、注文が薄かったりすれば、取引しやすさを同じようには受け取れません。資料の先物市場の図では、スプレッドの拡大や価格インパクトの上昇、注文枚数の減少は、流動性が低い側の動きとして示されています。出来高の多さと、取引のしやすさを一つにまとめないのがよさそうです。
9月30日公表でも、9月30日の市場ではない
この公表分の先物市場の図表1・2は、直近が8月末で、後方10日移動平均を使っています。現物市場などの図は集計期間が異なるため、各図の注記を確かめましょう。公表日の新しさと、観測した期間の新しさは別の話です。
8月のデータを10月の買入れ予定と並べることはできますが、「10月の減額によって、8月の市場が変化した」とは読めません。今回の記事も、流動性が足元で改善したか悪化したかを判断するために、グラフの値を推計しているわけではありません。

ドル円につなげる前に、見る順番を整える
予定、残高、市場の状態を一行ずつ分ける
ニュースを読んだときは、「これからどれだけ買う予定か」「保有残高はどの時点で、何が増減要因か」「市場の取引しやすさはいつのデータか」を別々に書き留めてみると整理しやすくなります。今月の予定額だけで、日銀の保有残高や国債市場全体の状態を言い切るのは難しいところです。
買入額だけで円高・円安を決めない
為替を読むうえでは、国債買入れの予定に加え、実際の金利の動きや海外の材料、市場が事前にどう受け止めていたかも見比べたいですね。これは確認する観点であり、今回の資料から円高・円安を予測したものではありません。
買入れ額、保有残高、取引しやすさ。数字の置き場所が分かると、同じ「減る」という言葉でも、何が変わった話なのかを追いやすくなります。
2026年10月1日午前(日本時間)に確認できた公開資料をもとにしています。予定は変更される場合があります。架空例は仕組みの説明用です。


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